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わが友・河野優司を悼む

  • 執筆者の写真: 西村 正
    西村 正
  • 2022年3月31日
  • 読了時間: 4分

(紫のジャージが河野優司氏、2021.12.27 新宿にて元同僚たちと、テーブルの向こう側右から二人目が私)


 わが友・河野優司が死んでしまった。実はこのウェブギャラリーは河野の存在があってこそ実現したものなので、いささか個人的な話題になるが、ここで紹介することをお許しいただきたい。

 河野と出会ったのは1985(昭和60)年に、私がそれまでの中学校勤務から高校勤務に変わって初めての学校においてである。その年は4月に次男が生まれ9月に父が亡くなるという、公私ともに慌ただしい年であった。学校というところはそれぞれに独特な文化と呼べるものを持っており、中学校勤務のときも転勤でその違いを感じたものだが、高校には中学校とは全くと言っていいほど異なる伝統文化があってまた驚いた。一言で言えば極めて個性的な教師が揃っているということなのだが、社会科教師である河野もまたその一人であった。河野は早生まれだが私と学年が同じであるという気安さがあった。

 彼は何しろ人脈が豊富であり、教員以外にも多くの職業の友人がいる。彼とは同じ学年や校務分掌で一緒に仕事をすることが多かったが、私にとって特に大きかったことは、東京から横浜に引っ越すにあたって不動産会社や会計士などを紹介してもらったりしたのだが、東京を離れることを躊躇していた私に横浜住まいを強く薦めてくれたことである。全日制の進学校勤務に拘り続けていた私に夜間定時制への転勤を薦めたのも河野であった。いま私は定時制を経験できて本当によかったと思っている。また、私の叔父の最後の展覧会開催についてもいろいろ手伝ってもらったし、退職してからもホームページ作りで信頼できる業者を紹介してもらったりした。彼は九州生まれということもあって九州に人脈が多く、このウェブサイトの制作・運営についても九州の業者にお願いしているのは、そういう理由からである。

 彼は教職員組合の本部役員を長年務めたり、横浜市立高校の再編整備計画(その中心は定時制の統廃合)が持ち上がったときには反対運動の先頭に立った。その後、痴漢冤罪事件に巻き込まれて有罪判決を受け懲戒免職処分を受けるという出来事があったが、同僚や卒業生を中心とする抗議や処分取り消しの請願運動もあって、東京高裁では有罪は覆せなかったものの「懲戒免職は行きすぎ」との付帯意見がつけられ結果的に懲戒免職は取り消された。しかし教職に戻ることはなく、彼のその後の活動はタクシー運転手をやりながら著述や映画制作に移っていった。そして初監督作品として映画『2887---アベ政治を記憶する』を発表し上映活動に力を入れていたが、先日宮崎市のホテルで倒れ帰らぬ人となったのである。入浴中の事故であったという。

 確かに河野には向こう見ずなところが多分にあり残された者が当惑しているのは確かだが、それをもって彼の想いを全否定することは私にはできない。彼が映画の計画を打ち明けたとき、私は「借金してまでやることなのか?!」と反対し「道楽は人に迷惑かけずにやれ!」と揶揄して彼を怒らせた。それでもできる範囲で上映活動を手伝ってきたつもりではある。


 河野、君は家族同士の付き合いとか家族を巻き込むことを嫌ったね。個人と個人の付き合いを好んでいたんだね。僕はあらゆることにおいて中途半端だったな。あの痴漢冤罪事件の裁判闘争の支援においても、今度の映画についても。もっと強く反対すべきだったのかな。反対しても君は、やめなかっただろうけど。そして、たとえ意見が合わなくてもきっと君は僕と会うことを拒否しなかっただろうけど。つい先日会ったとき、コロナ禍でスナックにカラオケをやりに行かれないと僕が言ったら「俺は”ひとりカラオケ”に行ってる。楽しいよ。今度一緒に行こう」と君は言ったね。でもそれは果たされることがないままになってしまった。でも今度カラオケのマイクを握るときには、きっと君が隣にいると感じることだろう。これからも、記憶の中の君に意見を求めていきたい。 合掌 (2022.3.31


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